1. 背景・目的

近年、生活習慣病への関心が高まると共に、その予防作用をもつ機能性食品にも関心が高まっている。大豆は生活習慣病の予防作用が注目されている食品素材であり、タンパク質、食物繊維、ビタミンE、カルシウム等の栄養素のほか、大豆タンパク質、大豆イソフラボン、サポニン、レシチン等の機能性成分を含んでいる。

また、有胞子性乳酸菌は、芽胞を形成するために耐熱性があり、通常の乳酸菌では不可能な菓子やパンなどの焼成や乾燥させた食品にも生菌で適用可能である。さらに、芽胞は、胃酸・胆汁酸に耐え、 ほぼ100%腸管に達し、乳酸を生成し、腸や免疫系に有益な影響を与えるので、プロバイオティクスとして利用されている。今回使用したlilac-01株は、アテリオ・バイオ (株) の独自のライラックの花弁から単離した株である (特許第5006986号)。2011年に行ったオカラとlilac-01株を添加したパンを被験食としたヒト介入試験では、摂取前と比較して4週間摂取後のLDLコレステロール値が有意に低下していた (p<0.05)。

今回は、lilac-01株を添加したオカラ粉末 (ライラック乳酸菌®) の便通・便性改善効果を約300人の被験者で評価を行ったので報告する。

 

2. 方法

被験食は、プラセボとしてオカラ粉末 (キッコーマンソイフーズ (株) )、試験食としてソイティス® (アテリオ・バイオ(株)) を1日あたり1包 (2 g) 供した。試験食が含有する乳酸菌数は1日あたり1×108 cfuと、ヨーグルト用乳酸菌等の試験の1/100―1/1000 cfuに設定した。

北海道情報大学生命倫理委員会の承認後、便秘傾向を自覚する20歳以上80歳未満の男女を対象とし、試験責任医師が適格であると認めた297名を被験者とした。

試験形式は、プラセボ対照ニ重盲検並行群間比較で行った。試験スケジュールを図1に示した。年齢、男女比と、国際的機能性便秘診断基準であるROMEIIIアンケートのスコア値が均等になるように2群に割り付けた結果、プラセボ摂取群149名、有胞子性乳酸菌入りオカラ粉末 (ライラック乳酸菌®) 摂取群148名で試験を実施した。

被験者には、毎日被験食1包 (2 g) を2週間継続摂取していただき、食事制限を行わず通常の食事をとっていただいたが、新たに医薬品やサプリメント等を摂ることは禁止した。

スクリーン時には、生活習慣アンケートと、ROMEIII診断に基づいたアンケートに答えていただいた。摂取開始1週間前から摂取終了後までは、毎日、排便回数、排便量 (直径2 cm×長さ5 cmの円柱何本分か)、便の色と形 (しおりの一番近い数字。形はBristol stool scaleを使用。図2)、便臭、便の出かた、すっきり感を点数で記入していただいた。便の形以外は、状態の悪いほうの点数が小さくなるように設定した。日誌に、毎日の体調、食生活状況、被験食摂取状況も記載していただいた。

統計解析は匿名化した後、7日間の平均値と合計値を算出し、SPSSを用いて、群間比較を変化量のMann-Whitney U検定、群内比較をGemes-Howell法を用いて行い、有意水準を5%未満とした。また機能性便秘の被験者と機能性便秘ではない被験者とのサブクラス解析も同様に行った。

 

3. 結果・考察

摂取率8割未満と日誌記載不足等で29名の脱落者がいたため、解析は268名で行った。ROMEIII診断に基づいたアンケートから、そのうち137名 (被験者全体の51%) を機能性便秘の被験者とした。

便通・便性の変化を表に示した。開始時と摂取2週間後の変化量をプラセボ群と比較すると、被験者全体では、便の形のみが変化する傾向がみられた (p=0.06)。一方、機能性便秘被験者では、便量、すっきり感、便回数が有意に改善し (p<0.05)、形は有意に変化していた (p<0.05)。便の色、臭いは改善傾向がみられた (p=0.07)。機能性便秘でない被験者では、便量のみに改善傾向がみられた (p=0.07)。機能性便秘被験者の便の臭いに関しては、開始時と摂取1週間後に、有意に改善されていた (p<0.05)。

表1 便通・便性の変化 (0と2週間の変化量の群間比較)

  臭い 出かた すっきり感 回数
被験者全体 プラセボ 0.43±0.13 -0.16±0.12 0.16±0.08 0.20±0.08 0.13±0.06 0.14±0.07 0.06±0.05
乳酸菌 0.43±0.14 0.17±0.13 0.21±0.09 0.31±0.09 0.15±0.07 0.30±0.09 0.12±0.07
機能性便秘 プラセボ 0.33±0.17 -0.24±0.19 0.15±0.11 0.16±0.12 0.17±0.09 0.20±0.09 0.05±0.06
乳酸菌 0.82±0.20* 0.28±0.18* 0.41±0.11 0.52±0.11 0.34±0.09 0.54±0.11* 0.30±0.09*
機能性便秘ではない プラセボ 0.53±0.20 -0.07±0.15 0.16±0.13 0.24±0.10 0.09±0.10 0.08±0.10 0.07±0.07
乳酸菌 0.03±0.19 0.06±0.19 0.02±0.14 0.09±0.14 -0.04±0.10 0.07±0.13 -0.06±0.09

平均値±標準誤差で示した。統計方法: Mann-Whitney U test, *p<0.05, **p<0.01

表2 便通・便性の変化のp値 (0と2週間の群内比較)

  臭い 出かた すっきり感 回数
被験者全体 プラセボ 0.036* 0.534 0.251 0.094 0.192 0.247 0.517
乳酸菌 0.029* 0.489 0.075 0.007** 0.151 0.004** 0.273
機能性便秘 プラセボ 0.332 0.505 0.477 0.455 0.187 0.200 0.756
乳酸菌 0.001** 0.432 0.004** 0.000** 0.003** 0.000** 0.005**
機能性便秘ではない プラセボ 0.096 0.929 0.528 0.184 0.721 0.821 0.685
乳酸菌 0.992 0.946 0.993 0.820 0.922 0.857 0.857

統計方法: Games-Howell法, *p<0.05, **p<0.01

臨床試験結果:

Minamida, K., Nishimura, M., Miwa, K., and Nishihira, J.: Effects of dietary fiber with Bacillus coagulans lilac-01 on bowel movement and fecal properties of healthy volunteers with a tendency for constipation. Biosci. Biotechnol. Biochem., 79, 300-306 (2015).

論文はこちら
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25338680

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図2 便の色と形のしおり

 

 

開始時と摂取2週間後の群内比較では、被験者全体では、プラセボ群の便量 (p<0.05)、乳酸菌群の便量 (p<0.05)、臭い (p<0.01)、すっきり感 (p<0.01) が有意に改善した。機能性便秘では、便量、色、臭い、出かた、すっきり感、便回数が有意に改善した (p<0.01)。機能性便秘でない被験者では、変化がみられなかった。

以上のことから、約300人の被験者で行ったヒト介入試験の結果、機能性便秘の被験者では、有胞子性オカラ粉末 (ソイティス®) を一日2 g (1×108 cfu)摂取することにより、プラセボと比較して、便通・便性(便量、形、すっきり感、回数)が有意に改善することが示された。

 

【連絡先】 アテリオ・バイオ株式会社 info@arterio.co.jp