「腸内フローラのバランスの乱れ」でアルツハイマー病になる可能性もある?(慢性炎症⑤)

「腸内フローラのバランスの乱れ」が「慢性炎症の元」で「万病の元」⑤

次はアルツハイマー病です。アルツハイマー病の原因は、私が若いころは、アルミがよくないといわれて、アルマイトの鍋を全部捨てましたが、もちろん鍋やヤカンのせいではなく・・・「アミロイドカスケード仮説」*1というのが一般的ですが・・・(アミロイドベータが脳にたまるという説)、最近は、「脳炎症仮説」というのもでてきたそうです。

というのも、アルツハイマー病の患者さんの脳内で、免疫細胞(ミクログリア)が活性化していて、アルツハイマー病は、「慢性の炎症性疾患」とわかってきたからです。*2

その炎症が腸内フローラの乱れから始まるのもまだ仮説ですが、総説*3に書いてあったのでなるべく簡単に書いていきますね。

高脂肪食を続けると、腸内フローラのバランスが乱れて
(脂っぽい食事を消化するために胆汁がたくさんでて、胆汁の中に入っている胆汁酸がいい菌を殺すので)

腸がスカスカになるので、普段は腸からでていかない悪い物質や菌(グラム陰性菌の破片など)が血液の中に入る
(いい菌たちが作る短鎖脂肪酸(腸の細胞更新に必要)ができなくてスカスカになる)

悪い物質をやっつけようと免疫のバランスが崩れて、全身が炎症を起こす

脳の関所(血液脳関門)もスカスカになるので、脳にも悪い物質(腸内にできた物質、(菌)、菌の破片、生理活性物質(サイトカイン)など)がはいって

脳の免疫のバランスが崩れるので、脳神経が炎症を起こして、神経細胞が死んで

認知機能障害がおこる

歯周病も全身の慢性炎症を起こすことがわかっていますが、なんと、アルツハイマー病の患者さんの脳から、歯周病菌(ジンジバリス菌)*4の破片(LPS)がみつかったそうです!*2

げー!
菌の破片が脳にある!
そうしたら、脳もそれをやっつけようと炎症を起こしちゃいますよね~*5

腸内細菌がつくった「アミロイドβ」が、血管に入って、脳の関所(血液脳関門)を通過して、たまったという報告もあるそうですよ~*2

鍋のアルミのせいでなかった!

これで安心してアルマイトの鍋を使える!

歯周病から全身の炎症が起き、アルツハイマー病のリスクも高まるので*6、食べ物だけでなく、歯茎のお手入れも忘れずに。


歯のブログはこちら
https://arterio.co.jp/2017/08/16/gum1/
④まであります。

図も貼っておきますね。

下の①から始まります。

腸内フローラから始まる脳炎症仮説

じゃあ、どうするか?
長くなったので、続きはこちら→ https://arterio.co.jp/2020/04/15/dysbiosis-6/

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*1:アミロイドβ(というペプチド、39-42個のアミノ酸)が凝集して構成される老人斑(アミロイド斑)が脳神経細胞外に沈着することや過剰にリン酸化されたタウたんぱく質(神経軸機能の維持に必須なタンパク質)の神経原繊維変化が脳神経細胞内で起こることにより、神経細胞が死滅するという説
(神経原繊維変化(NFT):タウたんぱく質が結合した凝集体。脳細胞へ栄養を送れないで、細胞死を引き起こす(tangleはもつれ))

*2:石田ら、歯周病はアルツハイマー病を悪化させる
https://www.jstage.jst.go.jp/article/perio/60/3/60_147/_html/-char/ja

*3:Spielman et al., Unhealthy gut, unhealthy brain: The role of the intestinal microbiota in neurodegenerative diseases. Neurochem Int. 2018;120:149-163.

*4:歯周病菌(ジンジバリス菌):Porphyromonas gingivalis

*5:PG菌のLPSにより、免疫細胞のミクログリアが活性化し、脳炎症を起こす報告あり*3。活性化されたミクログリアによってアミロイドβの産生・蓄積・認知機能崩壊が起こることも報告あり。*3

*6:口の中から唾液や食べ物と一緒に腸内に歯周病菌が入って、腸から血管に、(菌や)菌の破片がはいって、脳にもはいって、免疫が活性化されて、脳が炎症を起こして、アルツハイマー病に影響を与える*2

補足1:藤井ら、アルツハイマー病の背景と発症
https://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/5/55649/20180206140002965011/srfa_107_005_010.pdf

補足2:
アルツハイマー病の病理(老人斑、神経原繊維変化)
大脳皮質における神経細胞の著しい脱落に加え、老人斑と神経原線維変化の沈着を特徴とする。老人斑は神経細胞毒性の強いAβタンパク(主にAβ42)が神経細胞外に沈着したものであり、神経原線維変化はリン酸化されたtauタンパクが神経細胞内に蓄積したものである。

 

 

 

図6)老人斑と神経原線維変化の病理組織像
A. 老人斑(抗アミロイドベータ抗体による免疫組織化学染色像)/側頭葉皮質(60歳女性)
B. 神経原線維変化(Gallyas-Braak染色像)/海馬CA1領域(60歳女性)
C. 老人斑と神経原線維変化(Bodian染色像)/海馬CA1領域(73歳女性)
柿田明美博士と譚春鳳博士のご好意により提供していただいた(共に新潟大学脳研究所附属生命科学リソース研究センター脳疾患標本解析学分野所属)。
新潟大学のHPから引用させていただきました。
https://www.bri.niigata-u.ac.jp/~idenshi/research/ad_3.html ;

筆者について

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