なんと黄色ブドウ球菌の細胞外小胞(EV)がアトピー性皮膚炎を起こすそうで、それを乳酸菌のEVが防ぐかもという報告の紹介です。
その結果だけでなく、いろいろ驚きのことが書いてあって・・・
(1)尿と血清中のEVの菌叢を調べたら、ほとんど同じだったので、サンプリングしやすい尿で調べた。
血液中だけでなく、尿の中にも、菌のEVがあるんだ~!そうしたら、腸内細菌やライラちゃんがつくったEVも私の血液だけでなく、尿中に含まれているかも!調べてみたい~♡
(2)アトピー皮膚炎の子(27人)と健康な子(6人)の尿中のEVの菌叢を調べた。
①健康な子のほうが、アトピーの子よりも菌の種類が多い(腸の病気になると菌種が少なくなることはよく報告されている)。
②門をみると(左の図)、健康な子は、グラム陽性菌(のうちファーミキューテス、左の図の濃いピンク色)が多いのに、アトピーの子は、グラム陰性菌(のうちプロテオバクテリア(病原菌が多く含まれている)、左の図の薄紫色)が多い。(アトピーの子には、シアノバクテリア(薄い緑色)も多いけど、クロレラでも食べているんだろうか???不思議)
③属をみると(右の図)、健康な子は乳酸菌(紫色)が多い。
アトピーの子は、シュードモナス属(ピンク色)が多い(左の図のプロテオバクテリア門の中に属している)。普通自然界に多くて、人間の体に多い菌でないと思うけど、なんで多いのだろう?(人間の病原菌は緑膿菌くらい?)と思ったけど、正常なフローラの菌だそうです。
プロピニオバクテリウム属(濃いピンク、皮膚の常在菌、アクチノバクテリア門に属している(左の図の一番濃いピンク色))も多い。皮膚の正常なフローラの菌で、プロピオン酸とバクテリオシン(菌の増殖を抑える物質)を作るので、黄色ブドウ球菌を殺してアトピーを治すため、体が増やしているのかも。
アリシクロバチルス属って初めて聞いた。酸性で生えるバチルスらしいけど、なんでこんなマニアックな菌が増えているんだろう?アトピーの治療をすると減ったらしいから、アトピーと関係ある悪い菌かと思ったら、アレルギーから守る菌らしい。これも治すために体が増やしているんだな。すごいな、体。)
ということで、健康な子とアトピーの子の尿に入っているEVの菌の種類は違う。
違いをまとめた図が下で、
健康な子には乳酸菌由来のEVが多いけど、アトピーの子には、シュードモナスやプロピニオバクテリウムなどのEVが多い。
ここまでで、リラ子大興奮(^^)
腸内フローラを調べるときに、被験者からウンチをもらって、ウンチからDNAを抽出するのですけど、これがウンチを提出する方(被験者)も、ウンチからDNAを抽出する方(研究者とか分析会社)もハードルが高い。ウンチ臭いですからね~ 「ウンチなんか大嫌いだ」と暴れた学生さんもいました。
日本でウンチからDNAを抽出する会社はテクノスルガ・ラボさんだけです。(前に調べた)
その点尿ならば、健康診断のついでにちょっと多めに出せば提出する方も抵抗ないし、分析する方もたぶん臨床検査技師さんは検査しなれているから抵抗ないはず。
しかもウンチならば、腸内細菌のDNAしかはいっていないけど、尿ならば全身の菌が出したEVのDNAが入っているから、尿で、その人丸ごとの菌叢がわかる!
人間のぱっと見で、健康な子とアトピーの子の違いが判るくらいだから、AIにでも判定させれば、他の病気の可能性もすぐに判定できるかも。今症状がでていなくても、実は慢性炎症が起きていて、これから病気になることも予測できる。例えば、歯周病菌が全身に入り込んでいる人ならば、歯周病菌からEVがたくさん出ているから、健康そうに見えているけど、体の中では慢性炎症が起きていて、これはやばいからすぐに歯医者さんにいって、歯周病を治せって話になるし、そうすれば、菌由来の病気が簡単に発見できて、いいんじゃないですか\(^o^)/
癌細胞がだすEVを調べて、どんな癌になっているか調べる研究が進んできていますけど、それよりもっと簡単だから、「尿中のEVで調べる健康診断」も誰か研究してくれないかなあ~ ネックは、今のところEVは超遠心という高い機械で長時間かけてEVだけを落として、DNAキットで抽出して、PCRだから、超遠心と抽出とPCRかな~ 操作は簡単だけど、検査でたくさんの検体をやるにはもっと簡単にしないとね。新型コロナの検査と同じね。でもコロナと違ってRNAでなくDNAなので、もう少しラフに抽出しても大丈夫。続く~
アトピー性皮膚炎(慢性の再発性炎症性皮膚炎なのね。。。乳酸菌のEVで再発しなくなるといいな)
論文は、
Kim, et al., Lactobacillus plantarum-derived Extracellular Vesicles Protect Atopic Dermatitis Induced by Staphylococcus aureus-derived Extracellular Vesicles. Allergy Asthma Immunol. Res. 2018;10: :516-532.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6082821/
(タイトル:Lactobacillus plantarum由来の細胞外小胞は、黄色ブドウ球菌由来の細胞外小胞によって誘発されるアトピー性皮膚炎を保護します)