短鎖脂肪酸と腸内細菌のネットワーク ② (短鎖脂肪酸をつくる腸内細菌について)

短鎖脂肪酸のリレーがうまくいって、必要な短鎖脂肪酸ができるには、短鎖脂肪酸をつくる腸内細菌のネットワークがうまく働くことが大事です。なぜなら短鎖脂肪酸は、一つの菌が作るのではなく腸内細菌たちが、みんなで協力してつくるからです。

フリント先生チームの論文にあった腸内細菌のリレーの図を一部変更したのが下の図です。

Bと書いてあるのは、いろんな役割の菌のグループです。

詳しく書きます。

B1(オレンジ)は、酢酸、プロピオン酸などをつくるグループで、バクテロイデス属などが含まれています。なんでも食べる菌が多いですが、炭水化物だと酢酸などを多く作りますが、タンパク質だけだと、短鎖脂肪酸以外のものを多く作ります。このグループは、pHが低い(pH5.5)のは苦手です。

B2(黄色)は、デンプンを分解して主に酢酸などをつくるグループです。ルミノコッカス ブロミ(Ruminococcus bromii)が含まれています。この菌はよくデンプンを分解して糖にするので、この菌がいると酪酸菌もよく増殖するそうで、腸内でデンプンを分解する要の菌とフリント先生チームはほめています(?)。イギリス人には多いようですが、日本人にはあまり多くない菌です。ただ日本人でも太った人には増えているそうです。ルミノコッカス属は油の消化を助けるためにでる胆汁酸に強いから、胆汁酸に弱い他の菌に代わって増えるのだと思います。低pH(5.5)は苦手です。(たぶん米族には少ない菌。米族はビフィズス菌がデンプンを分解するのを担当しているから)

B3(黄緑)は、食物繊維を分解して、主に酢酸をつくるグループです。ルミノコッカス アルバス(Ruminococcus albus)など牛の胃の中にいてセルロースを分解できる菌が含まれます。あまり日本人にはいないと思われます。(イギリス人にはそれなりにいるので、この図に登場なのかな?)

B4(緑)は、乳酸生成菌で、主に酢酸や乳酸などをつくります。ビフィズス菌が含まれています。ビフィズス菌は菌種によってはデンプンを分解できます。ご存知のように日本人に多い菌です。もちろん酸性側は得意です。ビフィズス菌もデンプンを分解できるので、デンプンを分解する菌のところにB4も加えました。(写真は、大人の腸内にいるビフィズス菌 B. adolescentis)

B5(水色)は、デンプンを分解して酪酸をつくる酪酸菌①です。主に酢酸を利用して酪酸を作ります。ユーバクテリウム レクタル(Eubacterium rectale 写真)とかロセブリア属(Roseburia属)の菌たちで、この菌たちは日本人に多いです。レクタルは直腸という意味です。低pH(5.5)は得意です。(米族はB4とB5がセットかな?)

B6(青)は、デンプン分解が苦手で酪酸をつくる酪酸菌②です。主に酢酸から酪酸などをつくるフィーカリバクテリウム・ プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii) です。この菌は1つの菌で1つの属をつくっていて、菌名はウンチの桿菌、ヒトの名前で、グラム陰性菌なのに、グラム陽性のクロストリジウムクラスターに分類されている(クラスター4)不思議な菌です。不思議な菌の割には菌数が多くいろいろな人からも検出されます。低pH(5.5)が少し苦手です。 https://institute.yakult.co.jp/bacteria/4269/
https://en.wikipedia.org/wiki/Faecalibacterium

B7(青紫)は、いろいろ食べることができて酢酸やプロピオン酸をつくるプロピオン酸生成菌です。乳酸利用菌なので、この菌たちがいないと乳酸がたまって下痢になることもあります。ベイロネラ属(Veillonella)やメガスフェラ エルスデニ(Megasphaera elsdenii)などがあります。

B8(紫)は、酪酸菌③で、ユーバクテリウム ハリー(Eubacterium hallii)やアナエロスチペス属(Anaerostipes)などが含まれます。いろいろ食べれて酢酸も酪酸も作れますが、乳酸からも酪酸をつくれる乳酸利用菌なので、この菌が少ないと乳酸がたまって下痢になる可能性があります。

B9(赤紫)は、いろいろ食べれて酢酸も作れるけれど、水素や二酸化炭素(ギ酸)から酢酸をつくる酢酸生成菌(acetogens)です。酢をつくる酢酸菌とは別です。ブラウティア ヒドロゲノトロフィカ(Blautia hydrogenotrophica)という菌が知られていて、日本人には多いようで、最適pHが6-7なので、オリゴ糖を食べすぎてpHが下がりすぎると、働けないので、ガスができるとも考えられます。日本人にはいる菌のようですが、菌数は多くなく、個人のフローラを研究で調べていた時はでていませんでした。太った人には多いようで、増えているようです。

https://microbewiki.kenyon.edu/index.php/Blautia_Hydrogenotrophica
https://microbewiki.kenyon.edu/index.php/File:Blautia_Hydrogenotrophica_stain.jpg

B10(ピンク)は、メタン生成菌(methanogens )です。水素や二酸化炭素から、メタンを作ります。この菌は牛や羊のような草食動物の胃に多いので、ゲップに多く含まれていて、温暖化の原因ともいわれています。日本人の腸内フローラにはあまりいないですが、西洋人に多いようです。アーキア(古細菌)です。( メタノブレヴィバクター・スミシーMethanobrevibacter smithii )
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%BF%E3%83%B3%E8%8F%8C

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%BF%E3%83%8E%E3%83%96%E3%83%AC%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%90%E3%82%AF%E3%83%86%E3%83%AB%E5%B1%9E

このうちの一つのグループが欠けても、最後の酢酸、プロピオン酸、酪酸はできないのです。
絶妙なリレーですよね!

そして図の「短鎖脂肪酸」の出発をみてください。

タンパク質もありますが、B1のオレンジ(バクテロイデス)だけで、
食物繊維、オリゴ糖・糖、デンプンから始まって
オリゴ糖・糖は、食物繊維やデンプンから分解されてできるのです。

ということで、体にいい短鎖脂肪酸を腸内細菌につくらせるのも
まずはヒトがデンプン、食物繊維を食べるところから始まります。

そして食物繊維(ペクチン、ヘミセルロースなど)はたくさん食べることはできません。
たくさん食べることができるのは主食。主食に含まれるのは、腸まで届くデンプンです。

だから腸まで届くデンプンを含む主食を食べることが、腸内細菌や体にいい短鎖脂肪酸をつくらせるためには大事なのです。続く

補足説明:正常な腸内のpHは、5.5~7.5なので、ここでは低pHを5.5として考えています。

写真は、光岡知足先生の「腸内菌の世界」から引用させていただきました。

①Modelling the emergent dynamics and major metabolites of the human colonic microbiota. Kettle H, Louis P, Holtrop G, Duncan SH, Flint HJ. Environ Microbiol. 2015 May;17(5):1615-30.
Ruminococcus bromii is a keystone species for the degradation of resistant starch in the human colon. Ze X, Duncan SH, Louis P,  Flint HJ. ISME J. 2012 Aug;6(8):1535-43.
③The role of pH in determining the species composition of the human colonic microbiota. Duncan SH, Louis P, Thomson JM, Flint HJ. Environ Microbiol. 2009 Aug;11(8):2112-22.
④Comparison of the gut microbiota composition between obese and non-obese individuals in a Japanese population, as analyzed by terminal restriction fragment length polymorphism and next-generation sequencing. Kasai C, Sugimoto K, Moritani I, Tanaka J, Oya Y, Inoue H, Tameda M, Shiraki K, Ito M, Takei Y, Takase K. BMC Gastroenterol. 2015 Aug 11;15:100.

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