開発の出発点は、実はオカラの研究でした。大豆は日本人の体にあった、貴重な栄養成分を含む食品素材。その成分のオカラと乳酸菌を一緒に乾燥することで、オカラのカプセルに囲まれたライラック乳酸菌ができました。
オカラカプセルの効果がすごい
ライラック乳酸菌の効果を何倍にもすると考えられるのが「オカラカプセル」。
「オカラカプセル」とはいったい何か?どんな効果があるのかをご紹介します。
経済産業省の委託研究でオカラの研究がスタート
オカラにいろいろな菌を植えて、その活用法を検討する研究プロジェクトが、小さな運送会社に委託されました。
この運送会社が後のアテリオ・バイオの親会社となりました。
オカラは健康に良い食材なのに、お金をかけて捨てられていました。食べ物が豊富なのに、腸の病気が増えている理由はここにあるかもしれません。
10種以上の菌をオカラで培養して、活用法を検討しました。
ライラック乳酸菌の誕生
その研究の最後に採ったのが”ライラック乳酸菌”だったのです。ライラック乳酸菌は「芽胞」というタネのようなものをつくる特別な乳酸菌(有胞子性乳酸菌)。
ライラック乳酸菌は特に熱や酸などに強い菌を選りすぐってライラックの花から採りました。
オカラと相性が抜群のライラック乳酸菌
ライラック乳酸菌とオカラの相性は抜群でした。
オカラにはもともと健康に良い成分がたくさん含まれています。ライラック乳酸菌は納豆菌の仲間(バチルス属)なので、大豆のタンパク質を好んで食べました。
腸の中でもオカラの成分を食べて活躍してくれることが期待できました。
あまりにも良すぎるのはなぜだ
最高のオカラ利用法を目指したプロジェクトでしたが、想定以上のことが起こりました。
Dr.リラ子が確認のため、つくったばかりのライラック乳酸菌を自分で飲んでみました。普通の乳酸菌ではたいてい10億個くらいは必要ですので、10億個分のライラック乳酸菌の粉を飲みました。
そうするとびっくりするような、真っ黄色のバナナウンチになってしまいました。
えーなんでこんなに変わるの~。
超強力なライラック乳酸菌の秘密
オカラは乳酸菌を抱くような形で、しかも菌の栄養となる大豆成分を含んでいます。上の写真はオカラ粒子の割れ目で増殖中のライラック乳酸菌の電子顕微鏡写真(7000倍、撮影(株)トクヤマ)です。
このようにオカラ粒子がライラック乳酸菌の住家となり、そのため腸内で目覚める割合が単独の場合に比べて3倍以上に高くなることが動物試験でわかりました。
ライラック乳酸菌は、胃酸ではほとんど死なずにほぼ100%が腸に届きます。そしてオカラがカプセルとなって住家と栄養を提供するので、少ない菌数で大きな作用を発揮することが可能になったのです。
ライラック乳酸菌+オカラカプセルで腸の奥まで善玉化
さらに腸内の他の善玉菌を活性化して体に良い酸(短鎖脂肪酸)をつくっていることもわかりました(動物試験の結果)。
オカラカプセルの作用で腸の奥まで生きて届いて、腸内フローラの悪玉化を防ぐことがわかりました。
腸内フローラは善/悪のシーソーゲーム
腸内フローラの善玉と悪玉とはどういうことでしょうか?
細菌を善玉と悪玉にわける考え方はわかりやすいので、私たちも説明には使いますが、一部の病原菌を除いて腸内細菌はどんな菌でもよい面と悪い面を持っています。
腸内細菌の善/悪の違いは実は生息する環境によります。善玉菌と悪玉菌を明確に分けることは実際にはできません。つまり菌の周囲のpHや栄養によって善と悪がシーソーゲームのように入れ替わるのです。
便秘の原因は腸内フローラの悪玉化
便秘の原因は腸内フローラの悪化です。大腸の奥は悪玉化して腐敗物質ができやすく、便秘だけでなくいろいろな病気の原因になります。
悪玉化には二つの意味を含んでいます。
一つは腐敗物質ができるということ、もう一つは短鎖脂肪酸ができないということです。善玉化はその反対になります。
ライラック乳酸菌は腸内フローラを善玉化する
腐敗物質とは具体的にはアンモニアやインドール、スカトール、硫化水素、アミン類などです。これらは非常にくさい物質で、ウンチの臭いの多くはこれらによるものです。
腐敗物質をつくる細菌は腸内にたくさんいて、タンパク質を分解する際にアンモニア態窒素をつくりますので、pHが上昇してこれらの腐敗物質をつくる環境ができてしまいます。
腐敗物質をつくらせないためには腸内のpHを下げることが有効です。乳酸菌やビフィズス菌が体に良い効果を示すのは、腸内のpHを下げることによって腐敗物質の産生を抑える効果が大きく貢献しています。
腐敗物質は全身をめぐる
研究の途中3年間、豚にライラック乳酸菌を与えて、肉質の変化を調べました。
ライラック乳酸菌を与えた豚は肉質が劇的に向上したのです。
豚の肉質は腸内フローラの状態によって大きく変わります。肉の臭みは腸内の腐敗物質によって変化することがわかりました。
また腸内でできる短鎖脂肪酸のうちの酢酸とプロピオン酸は血流に乗って全身の筋肉に運ばれて代謝利用されます。
ライラック乳酸菌で腸内フローラを改善した豚肉は、オレイン酸が多く柔らかくて甘い肉になりました。
腸内細菌の最高の贈り物、短鎖脂肪酸
短鎖脂肪酸とは具体的には酢酸、プロピオン酸、酪酸をさします。腸内細菌がつくる物質で下図のような経路でつくられます。
出発は主に糖質で、小腸で消化されずに大腸に届いた水溶性食物繊維などです。顔マークは腸内細菌の種類を表しています。
整理すると、糖質は細菌に分解されて主に乳酸になります。乳酸は腸管から吸収されにくく、長く腸管内にとどまってpHを低下させます。
ビフィズス菌は乳酸と酢酸を2:3の割合でつくりますが、酢酸は腸管から速やかに吸収されますので、腸管内を酸性化する能力が劣ります。
次に乳酸から短鎖脂肪酸(主に酢酸、プロピオン酸、酪酸)がつくられます。顔マークを見ていただくをわかりますが、乳酸をつくる菌と乳酸を利用する菌は種類が違います。
短鎖脂肪酸をつくる条件はpH5~6.5であることがわかってきました。それ以上になると同じ菌でも腐敗物質をつくるものがあります。
短鎖脂肪酸の役割はたくさんあります。主なものをあげると酪酸は腸上皮細胞のエネルギーとなって、大腸のぜん動運動を亢進したり、腸のバリア機能を高める効果があります。
面白いことに大腸で生成された酪酸によって、上流にある小腸の絨毛細胞が回復することがわかっています。
また酪酸は免疫に作用して制御性T細胞という炎症やアレルギーなどを抑える免疫細胞を増やす働きがあるとされています。
短鎖脂肪酸の効果は1冊の本になるほどたくさんあります。まさに腸内細菌からの最高の贈り物です。
保護猫の命を救った
これはずっと後になってからの話ですが、捨て猫の保護を行っているボランティア団体の方が、生死の境をさまよう子猫たちにライラック乳酸菌を与えたところ、奇跡的に生還したそうです。
獣医も投げ出すような子猫を救ったのも、腸を元気にするライラック乳酸菌の力だったのです。
奇跡的に助かったプッチ
自分たちを実験台に検証
Dr.リラ子は乳製品アレルギーがあったため、自分にも飲める乳酸菌サプリメントを開発するという基本方針がありました。
社長もいろいろなものに食物過敏があって、お腹がゴロゴロする悩みがありました。
試してみると作り方によって作用が変化します。いろいろ条件を変えると腸の中での働き方がわかってきました。
どんどん広がる「ライラの輪」
オカラの研究から始まったライラ・プロジェクトは、動物試験やヒト介入試験などを経て、多くの方に使っていただけるようになりました。
さらに「ライラの輪」は広がりを見せています。ライラには抗炎症作用があることが最近わかってきました。これからのライラック乳酸菌にご期待ください。
参考図書
食品機能性の科学, 監修:西川研次郎, 発行:株式会社産業技術サービスセンター, 2008