オナラが湧き出る理由は間違った食事(動物に学ぶ健康2)

牛になった猫

オナラとゲップがたくさん出る動物とは?

オナラが異常に出る原因は、炭水化物と腸内細菌の出会い

オナラが止まらない、オナラが臭いなど、オナラについてのお悩みはありませんか。

ヒトも動物ですから、オナラは出て当然なのですが、最近は異常にオナラが出て、学校にも行けなくなったり、引きこもりになったりする例Cow catもあります。
いわゆる過敏性腸症候群(IBS)といわれるケースです。

お腹の調子が悪いとオナラが出るだけでなく、いろいろなところに影響が出ます。
お腹は健康の要です。人には相談しにくいテーマですが、オナラときちんと向き合うことで違った人生が見えてきます。

オナラとゲップで、地球の将来が危うくなる動物は何でしょうか?

正解は牛です。ゲップとオナラはでき方が同じで、出る方向が違うだけです(同じとは思いたくないですが)。
牛のゲップやオナラには大量のメタンガスが含まれています。
メタンガスは二酸化炭素の25倍の温暖化係数を持ちます。牛などの反芻動物が出すメタンガスの影響は、自動車が出す二酸化炭素の影響よりも大きく、全体の5%を占めるそうです1)

なぜ、牛はそれほどガスを出すのでしょうか。ここにオナラの悩みを解決するヒントがあります。

牛は胃と腸内に微生物を飼っている

牛の消化管と部位名
牛の消化管と部位名

牛や羊などの反芻動物の主食は草などの食物繊維です。食物繊維は糖質と同じ炭水化物ですが、固い細胞壁で守られているので、普通の動物は消化することはできません。
草食動物は進化のなかで、固い食物繊維を消化する能力を身につけました。

牛などの反芻動物は4つの胃を持っています。1番目の胃は一番大きくて、大人の牛ではドラム缶ほどの大きさがあります。
ここはルーメンという発酵タンクで、たくさんの微生物が住んでいます。というよりも牛の方が唾液に尿素を出して微生物を飼っているのです。

現代生活の落とし穴、間違った食生活がオナラの原因

オナラやゲップが大量に出る牛型システム

牛は草だけ食べていても、毎日牛乳を出し、肉を供給してくれます。それは食料の草をいったん微生物が食べてタンパク質に変えてから、その微生物ごと栄養にしているからなのです。

このシステムのおかげで、多くの動物が生きながらえることができたのです。草をはんでいる限りは素晴らしいシステムです。

腸内細菌も適材適所、小腸の菌がオナラをつくる

牛のオナラやゲップも、ヒトのオナラやゲップと原理は同じです。炭水化物が微生物と出会って、分解されると体に良い酸(短鎖脂肪酸)をつくり、同時に水素と二酸化炭素をつくります。
その時にメタン生成菌がいれば水素と二酸化炭素からメタンガスができます。
メタン生成菌を持っているヒトは日本人の場合、1割程度ですが、牛の場合はほとんどが持っています。

腸内細菌の居場所でかわるオナラの量

長生きの秘訣は腸内発酵

ヒトの場合、腸内細菌はどこにいると思いますか。「腸内」だから「腸」でしょうって?
でも「腸」には「小腸」と「大腸」があります。正解は「大腸」なのです。

大腸では腸内細菌が働いて、炭水化物から短鎖脂肪酸をつくります。その中でも酪酸という短鎖脂肪酸は免役を調整したり、がんなどの病気から動物を守る大切な酸です。

居場所が悪い腸内細菌がオナラをつくる

腸内細菌は「小腸」にも少しいますが、いろいろな事情で本来は小腸には住めないようになっています。ところがその小腸に細菌が異常増殖することがわかってきました。それを小腸細菌異常繁殖(SIBO、サイボまたはシーボ)といいます。
過敏性腸症候群のかなりの人がこのSIBOの疑いがあると言われています2) 3)

良い発酵は腸を元気にし、オナラも少なくなるPasture

実はこのSIBOは牛型の発酵タンクのような状態なのです。小腸に腸内細菌が多いと、食べたものが小腸に入って来た時に、糖質を一気に分解します。

その時に水素や二酸化炭素などのガスを一斉に出すのです。
本来なら小腸に細菌はあまりいないので、分解しやすい糖質はヒトの消化酵素でガスを出さずに消化されます。

牛の場合は草を食べていれば、反芻しながらゆっくりと発酵しますが、人の都合で分解しやすい穀物飼料(糖質)を与えると急激に発酵が起こって、ガスも大量発生するのです。

ヒトも動物、飢餓には対応していても飽食には無防備

腸の中を掃除すると、オナラが少なくなる

お腹がすくと「グー」と鳴ることがありますね。これはMMCと呼ばれる蠕動運動で、小腸の中をきれいに掃除して、腸内細菌を大腸に押し流す役割があります。
このMMC蠕動は別名ハウスキーパーと言われます。

実は、SIBOの原因は、間違った食生活にあるのです。小腹がすいた時につい甘いモノを食べたり、夜遅くまで飲み歩いていると、消化管の中が空になることがありません。

※伝播性筋放電群(migrating myoelectric complex)

食後2時間程度でお腹がゴロゴロするのはSIBOのせいかも

MMCは食事をすると消えて、3-4時間後からまた始まります。つまり間食をしたり、夜遅くまで食べていると腸の中が空になることがなくなって、MMCが起こらないのです。そうすると小腸に腸内細菌が上がってしまいます。
また食事をよくかまずに食べると腸内細菌が多い小腸下部や大腸まで未消化のまま届いてオナラが発生します。

SIBOかどうかは、ラクツロースというヒトが消化できない糖を使った呼気試験で調べますが、食事をして2時間前後でお腹がゴロゴロし始める場合は、SIBOの可能性があります(飲み込む空気もあります)。

オナラを減らすには、規則正しい食生活を!

腸内のガスは腸内細菌が炭水化物を分解して、短鎖脂肪酸をつくるときに発生します。
オナラをつくる腸内細菌を抗生物質で殺してしまえば、一時的にオナラは出なくなります。しかし体に必要な短鎖脂肪酸もつくられなくなり、かえって調子が悪くなります。

また、炭水化物の量を減らせばオナラも減りますが、これも同じ理由で結果的には良くないのです。
腸内で発生するガスは少量が徐々に発生する限り、腸壁が吸収してくれますので、気になることはありません。

まとめ

ヒトも動物です。基本的に飢餓には対応していますが、飽食には無防備なのです。できるだけ空腹の時間を長くとるなどのSIBO対策で、過敏性腸症候群の症状を減らすことができます。
また、よく噛んで食べるとか、夜遅くまで食べないことを心がけ、規則正しい食生活を送りましょう。

(参考文献)
1) 小林ら, 家畜からのメタン生成を低減する天然物質の探索, 日本農薬学会誌, vol.36, (1), 124–126 (2011)
2) 安藤ら, 腸疾患における腸内細菌のかかわり, 日本内科学会雑誌, vol.102, no.11, 2983-2989, (2013)
3) Lin HC, Small intestinal bacterial overgrowth: a framework for understanding irritable bowel syndrome., JAMA. Aug 18;292(7):852-8 (2004)


筆者について

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