「息む」という言葉があるくらい、排便には「息む」ことが必要と感じられるかもしれません。

実際、息むと排便されるのは、膨らんだ腸を押すことで肛門側に便を押しやるからです。

しかし「息む」ことが必須かというと、必ずしもそうではありません。人は植物状態でも排便や排尿は行われます。呼吸や発汗などの生命を維持する活動と同じように、排せつは意識とは無関係に機能します。ただいつ出るかわからないのでは困りますので、ちゃんとセンサーがついていてその信号が脳に行き、我慢したり出したりする指令を出しているのです。

息む動作によって直腸を押すことで便が肛門の方に下がり、肛門括約筋が開きます。実際に便を押し出しているのは直腸自身の平滑筋です。直腸の蠕動運動が便を押し出しますので、蠕動運動がきちんと起これば、息まなくてもスルッと便が出ます。

直腸の蠕動運動はどのように起こるのでしょうか。便がS状結腸から直腸に押し出されてくると、便の中の短鎖脂肪酸の刺激で直腸に蠕動運動がおこります。これが排便反射ですが、この刺激は時間がたつと消えてしまいますので、できるだけ生活のリズムの中で習慣化する事が必要です。便意を我慢するとなかなか出ないのはこのためです。

短鎖脂肪酸は蠕動運動のエネルギーとして利用されますので、腸内フローラを健全に保つ必要があります。短鎖脂肪酸は腸内フローラがつくります。

短鎖脂肪酸によって直腸の平滑筋の機能が維持されると便通が改善します。また毎日排便することで平滑筋もきたえられますので、頑張って腹筋をきたえる必要はありません。