DGGE法で腸内フローラを調べたら…(苦労話②)

腸内フローラ研究を始めた時の苦労話②

食加研の長島先生にDGGE法を習いにいった私達ですが、この方法は、手間がかかる、時間もかかる、きれいなバンドにするには難しい、実験のプロの自分たちでも無理だった→昨日まで学校の先生をやっていたような素人さんはやめたほうがいいといわれたのですが(ごもっともです)、でも無理だといわれるとやりたくなる天邪鬼。(*^_^*) しかも、この方法は変化の違い(結果)がとってもわかりやすい。

dgge1DGGEの機械(縦に電気泳動するだけなのですが高い)

たとえば、この図はDGGEができるようになったときにやった実験結果ですが、DFA3というオリゴ糖を食べさせないラット(C)と食べさせたラット(D)の腸内フローラです。代表で、1匹ずつ載せています。

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左と右のバンドの全体像を比べると、バンドの様子が違っていますよね~ このバンド1本1本が、1つの腸内細菌に当たります。同じ位置にあるバンドは同じ菌です。

左右で比べると、赤の3、5、7が増えています。このとき、DFA3を食べたラットのほうで増えたバンド(菌)(赤7番)が、ルミノコッカス プロダクタスで、これがヒントになって、嫌気チャンバー(酸素がない場所)で、DFA3を食べるルミノちゃんをとったのでした。そのお話はこちら https://arterio.co.jp/2016/03/03/1067/

ヒトでもやりました。同じくDFA3を、2か月間飲んでくれた人たちの腸内フローラです。
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(A,D、E、Jさんで、0がスタート、2が2か月後です)上のラットよりもバンドが多くてくちゃくちゃしてますよね。ラットと違って、ヒトはメジャーな腸内細菌の種類が多いのです。ヒト同士でくらべると、(A,D、E、Jの0同士)ちょっと違いますよね~ 同じ人の0と2か月でもちょっとバンドの様子が違ったりしています。こんなふうに、ヒト同士は腸内フローラが異なり、同じ人でも、食べ物とかが原因で、変わったりするのです。

次は、一緒に食加研にいってDGGEを習ったスジャーヤ家の図です。

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ブログ書くといったら、送ってくれました。いい人ですよ~ バリに遊びにいったら、案内してくれますよ~ 右から、スジャーヤさん(お父さん)、お母さん、長男、次男です。次男はまだ赤ちゃんで、お母さんのおっぱいを飲んでいたころなので、腸内フローラができあがっている他の3人とは明らかに違いますね~ 一番右端のお父さんとお母さんは、他人なので、少し違いますね。右から3番目の長男のバンドをみると、お父さんのお母さんのバンドを持っているのがわかります。

胎児でお腹にいるときは無菌状態で、お母さんの産道を通ってきて、、おぎゃーと息をし始めた時に、お母さんの菌が体にはいると聞きましたが、これをみると、ちゃんとお父さん由来の菌も子供に定着していることがわかります。世の中のおとうさん、よかったですね~(*^_^*)

これを読んでくださっているみなさんも、スジャーヤ家のように、先祖代々のお父さんとお母さんの菌たちがお腹にいるのです。大事に育ててあげてくださいね(^^)/

ということで、長島先生には無理だといわれていましたが、必死に頑張った結果、綺麗なバンドになる方法を開発できて「すごいな~!」って褒められたのでした。えっへん(*^_^*)

世間の荒波を乗り越えてきたおばさんの底力ですよね~ 20代女子の時ならば諦めていたと思います。

DGGEは見た目の変化はわかりやすいのですが、大変なのは、このバンドを1本1本切ることなんです。全部切るときは2時間はかかりました。UVを下から浴びて、バンドを光らせながら、その箱の中に、手袋はしていたけど、手をいれ、ずっとその怪しげな光をみながら、2時間切り続けるのです。もっとしたときもあったような・・・

そんなことを1週間に何度もやっているときもありました。今なら根気が続きません。

それに、いくら、UVを通さないプラスチックを通してみていても目は疲れるし、手をいれるので、多少UVは漏れていました。お肌や目には悪いですよね~ ちょっと気がふれていたからできました(^^)

そしてこのバンドから、DNAを取り出し、それぞれの菌名を調べました。あのころは、自分のもののようにシーケンサー(DNAを読む機械)を使っていたので、ガンガン読みまくりました。(そのころのリラ子は計1億円近くの機械を自分のもののように使っていたのです。贅沢なお話。冨田先生、浅野先生、横田先生ありがとうございます)

ということで、データがたまりまくり、日本語の論文も書いたことがないのに、英語も苦手にもかかわらず、無謀にもいきなり英語の論文を書き、当然文章とかがダメダメで、苦労して直して、日本で初めてのDGGEで調べたウンチの論文を出したのでした。

その後も調子に乗ってDGGEで実験を続け、結局、ヒトで2本、ラットで3本の論文を書きました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=minamida+asano
(DGGEは4-8番)

そして、これと並行して、胆汁酸の研究も始めたのでした。その一部はこちら https://arterio.co.jp/2016/03/08/rumino2/

長島先生の方法も論文化され
 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12571054
Nagashima法として、腸内フローラを調べる方法として、企業や研究室で用いられています。
https://www.tecsrg.co.jp/t-rflp/t_rflp_profile.html

論文の謝辞に、Kimiko Minamidaどうもってありますが、いいえ、こちらのほうこそ、DGGEを教えていただいて、その後もいろいろとお世話になって、今があります。長島先生もスジャーヤ先生もありがとうございます。

続く

筆者について

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