ストレスで便秘になることはあるのですか?

ストレスから下痢になることはあります。このようなストレス反応は動物が生きていく上で必要と考えられています。

例えば、あなたがネズミだとして、突然、ヘビに出くわした時に、あなたはとっさに「戦うか逃げるか」決めなければなりません。その時に下痢になって脱糞すると、敵の目(鼻)をくらますことによって、逃げることができかもしれません。

視力よりも嗅覚や熱感知の方が発達している動物は多いので、この分身の術は有効であったかもしれません。もともと大腸ができたのは、糞をためておいて安全な場所で出すためでした。糞は捕食者に狙われる原因になるからです。糞を身代わりに逃げる戦法はごく自然の成り行きなのです。緊張してお漏らしをするのは動物本来の性なのでしょう。

ストレスを感じるとお腹の調子が悪くなることは誰でも経験があると思います。脳と腸は影響しあっていてます。
このようなことから、便秘や下痢などすべての便通の問題はストレスが関係していると思われるようになりました。

過敏性腸症候群というのはひどい便秘だったり、慢性的な下痢で、異常にオナラが発生したりします。
お腹の中で大きな音がしたり、意志に反して漏れたりするので外出がままならず、学生の場合は学校に行けなくなったり、通学や通勤で各駅停車にしか乗れないので「各駅停車症候群」と呼ばれて問題になりました。
このような症状を持つ人は、全体の1割以上いることがわかってきました。

これまでこれらはすべてストレスが原因であると信じられてきました。しかしこのストレス原因説は、いま曲がり角を迎えています。

久里浜医療センターの水上医師は、多くの過敏性腸症候群の患者を大腸内視鏡で検査して、ストレスと関係のあるタイプとないタイプがあるといいます。
ストレスを自覚しない患者には弛緩型が多く、別の原因で便通障害が起こっているといいます。別の理由とは腸が異常な形をしていることです(腸の形態異常)。
ストレスを自覚する患者はけいれん型が多いということです。

これに対して過敏性腸症候群は「心の病」ではないと断言するのが、東北大学 東北メディカル・メガバンク機構の田中由佳里さん。

過敏性腸症候群のストレス説は、ストレスと便通は関係があり、ほかに原因が見つからないから、といい理由で始まりました。この辺りの事情については「内臓感覚(福土審,NHKブックス)」に詳しく書かれています。

実はストレス説にはちゃんとしたエビデンス(科学的根拠)がありませんでした。わからない問題はストレスが原因というと、何となくみんなが納得します。

便秘の原因はストレスという説は、けいれん型便秘の大腸の形が「(ストレスで)痙攣(けいれん)している」ように見えることから考えられたようです(→便秘のタイプ)。

同じような事例がほかにもあります。昔は胃潰瘍や胃がんの原因はストレスといわれていましたが、1983年にヘリコバクター・ピロリ菌が発見されてからは一転してストレスが原因とは言わなくなりました。

ストレスでお腹を下すことはありますが、それは「心の弱さ」のためではないといえます。便秘についてもストレスが原因という説は信ぴょう性に欠けるようです。