過去に極端な食事制限をしていたり、大きな腸炎を患った経験のある方は、大腸機能が影響を受けている可能性があります。いわゆる過敏性腸症候群(IBS)の人にこのようなケースが多いといわれています。

大腸の細胞は腸内細菌がつくる短鎖脂肪酸が主なエネルギー源です。短鎖脂肪酸をつくる腸内細菌の働きは一定の酸性度(pH)の範囲に限られていて、pHが低すぎても高すぎても短鎖脂肪酸がつくられなくなります。

慢性的な下痢の人の腸内には乳酸やコハク酸が蓄積してpHが低くなっていることが知られていて、低pHのために短鎖脂肪酸がつくられないという負のスパイラルになっています。

また一方で、大腸が委縮して細くなったり、異常な形態になっている人がかなりいることがわかってきました(→久里浜医療センターHP)。

この原因はまだ明らかにされていませんが、ダイエットによって腸内細菌のエサが供給されない状態が長く続くと、大腸に短鎖脂肪酸が供給させずに腸管が委縮してしまう可能性があります。特徴として遠位結腸(左側結腸)の萎縮がおこって便の通貨が妨げられます。

腸内細菌のエサである炭水化物をきちんと摂って、腸内で短鎖脂肪酸をつくることによって大腸機能を回復することができます。

(参考)
坂田ら,短鎖脂肪酸の生理活性,日本油化学会誌,vol.46,no.10,p.1205-1212 (1997)