腸内細菌にとってもいいバナナのデンプン(腸内細菌の立場で考える食物繊維⑩)

腸内細菌の立場で考える食物繊維⑩

1月に学校で働いている栄養士さんの勉強会で、「腸内フローラ、ウンチの観察方法、腸内フローラがよくなる食べ物」のお話しさせていただいて、そのときに、「朝食を抜く子供たちにバナナをすすめていいですか?」とのご質問があって「バナナ!それはいい!」と思いました。

食べやすいし、おいしいし、バナナを主食としてイモのようにして食べている国もあるので、腸に届くデンプンがあると思ったからです。それで戻ってきてから調べたら、古い研究が多かったですが、2011年に行われたバナナの臨床試験の論文がありました。ただでないので、どうしようかな~と思って、論文の雑誌会社のサイトにいったら、なんと!30ドルが今なら5ドル!という論文ではみたことがない「バナナのたたき売りのような」売り方だったので、ペイパルで買いました。

論文のバナナのたたき売り!しかもそれはバナナの論文(^^) ラッキーでした(^^)

結論からいうと、バナナには腸に届く粒の大きなデンプンが多く、それが分解していってだんだん甘くなっていくので、できればぐちゃぐちゃの柔いバナナではなく、硬めのバナナを食べると、腸内細菌のエサになって、短鎖脂肪酸もできるし、いいウンチになります。

論文とはいえ、人の話は鵜呑みにしませんので、もちろん自分の体で人体実験して。。。いいウンチになりました(^^)

柔いバナナはだめかというと、そうでもなく、バナナのデンプンが分解して、糖とオリゴ糖になるので、食べないよりはずっといいです。

では説明しますね~

バナナは生で食べるバナナと調理して食べるバナナがあって、日本に輸入されているバナナのほとんどは生食用です。緑のまだ未熟なうちに収穫されて、熟す処理をしてから売られます。この間、果肉中に含まれていたデンプンは分解されて、糖とオリゴ糖に変化します。とてもわかりやすい論文があったので、ご紹介しますね。

この論文は産地別バナナを7月の弘前の室温で貯蔵して、デンプン分解していく様子を調べたものです。

図3と図4と図5を合体させていただきました。左から台湾産、エクアドル産、フィリピン産それぞれの写真とデータです。左から0日目、8日目、15日目です。一番上はバナナの写真で、0日目は緑のバナナ、まだ食べられない未熟なバナナでした。上から2列目のバナナは、バナナを丸ごと半分にスライスして、中味にヨウ素溶液をかけて反応させた写真です。デンプンが多いと紫色になって、デンプンが少ないと紫色が薄くなります。上から3列目のグラフの薄い色がデンプン量で、濃い色が糖とオリゴ糖です。(グラフでは逆になっています)

左端が台湾バナナで、、初めは緑でデンプンが100g中25gもありましたが、、8日目には熟して黄色くなってデンプンは分解されて3gと減っています。エクアドル産もフィリピン産も、初めはデンプンが多く、分解速度は産地(品種)によって異なっていますが、だんだんデンプンが分解されて、糖とオリゴ糖に変わって、皮の色も黄色くなっていってます。

ということで、黄色く熟して甘くなるほど、腸まで届くデンプンは減っていくので、なるべく甘くない硬めのバナナのほうが、腸内細菌のためにはよさそうです。

台湾の8日目とエクアドルの15日目の過熟状態でも、澱粉は100g中3g程度残っていたので、腸まで届くデンプンが全然ないわけでもないようです。

そして、電子顕微鏡で、バナナのでんぷん粒の写真も撮って、大きさも測定しています。

初めはすべすべの澱粉ですが、だんだんアミラーゼに分解されて小さくなって、表面も層状になっています。実際に目で見ると腑に落ちますね~丸ごとバナナをヨウ素反応させたなんて、とてもわかりやすい。

野呂ら, バナナの澱粉, 弘前大学教育学部紀要. 105, 2011, p.75-79
https://repository.ul.hirosaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10129/4451/1/BFEduHirosaki_105_75.pdf

次は、小学生の実験でもできる報告書からです。昔、頬の細胞をとって観察したことがありますが、バナナの細胞と細胞内のデンプンを観察しましょうという実験です。バナナはスライドガラスになすりつけて、ヨウ素液をかけて、顕微鏡で観察しています。

写真をくっつけさせていただきました。袋状のものがバナナの細胞で、その中にある紫の粒粒がデンプンです。

緑の未熟なバナナ(左上)には粒粒が多いですが、熟したバナナ(左下)には粒粒が少ないので、熟すと澱粉がだんだんと減ることが見てわかります。さらに黄色いバナナの外側(右上)よりも、内側(右下)のほうが、粒粒が多いので、外側からデンプンは分解されることもわかります。外側のほうが甘かったのですね~これも目で見ると一目瞭然ですね。(小島, バナナの果肉細胞を用いた生物実験, 北海道立理科教育センター研究紀要, 82-85, 12(2000))

このデンプンが、あまり消化せずに腸に届いて、腸内細菌のエサになるので、いいウンチになります。小中学校で観察して、ウンチの話もしてもらえると嬉しいなあ~

おまけ:主食で食べられているバナナのブログです。食べてみたいなあ。

https://kendaikokusai2012.blog.fc2.com/blog-entry-34.html

次はバナナのたたき売りの論文の話です(バナナ②に続く)

追記:バナナのアレルギーの方もいらっしゃるようですので、もし喉がかゆくなったり、おならがでたり、お腹がはったり、下痢したりされるようでしたら、やめてくださいね。

筆者について

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